【続】発達障害だっていいじゃない  ~鬱な私と4人の子供達~

発達障害の子供達も成人したので、これまでのことも書きつつ、50代からの奮闘の毎日をつづります。

パラレルワールドは引き返せない

もう30年くらい前の事。あれからそんなに長い月日が経ったなんて全く信じられない。

 

かなり割愛するが猛勉強した大学受験。人生で一番勉強した高校3年の1年間。幼いころから「数学」だけは得意だった。高校の担任が数学の先生だったので、先生の鼻を明かしてやろうと中間も期末もいつも100点を狙っていたが、先生は一問だけ難問を入れてくるため、毎度95点。テスト返却の時の先生のほくそ笑む顔が鼻についた。でもそのお陰で模試ではほぼ満点が取れた。模試ってふるい落とすためのテストではなく、理解度を測るテストだから点が取りやすい。しかし英語と化学は平均くらいを推移していた。

 

両親に懇願して1年だけ塾に通わせてもらった。その塾の「英語」の先生が44歳独身で大人で素敵でリアル片思いをした。先生に褒められたくて一生懸命勉強した。しかし動機が不純だったからか成績はあまり変化なかった(笑)

 

塾の「数学」の先生はまさしく、いかにも、「The 数学」みたいな先生だった。高橋名人に似てて、ちょっと私のタイプではないが、めちゃめちゃほめて伸ばしてくれる天才先生に当たった。

 

「化学」この教科は土壇場まで苦手科目だった。でも9月から塾の先生が理科大東工大の現役の学生先生で教え方がめちゃくちゃ上手かった。同じクラスの全員が化学が得意科目になった。

 

そして大学受験。担任が薦める学校は通える距離ではなかったため、都内の薬学部を6校、滑り止めを2校一般受験した。緊張しすぎると気を失う息子達は確実に私に似ているのだと思う。薬学部6校受験したが、すべての試験で爆睡。滑り止め2校は一睡もせず完璧に解けた。滑り止め2校から合格通知が届いた。皆に話すと「寝なかったらみんな受かったんじゃん!」と笑われた。

 

結局、薬学部ではない化学系の学科に入学した。今は全てが医療系学部に変わってしまっているが、当時から医学部も薬学部も看護学部獣医学部、土木建築学部、水産学部畜産学部も存在した。当時200万人も浪人する時代で、私の2学年下までは人口が増え続ける。だから浪人しても合格する可能性はむしろ低くなる。浪人する勇気はなく、合格した学校に入学した。同じ学科でも推薦で入ってきた子以外はほとんどが浪人していた。

 

薬学部に入れず目標を見失ってしまった私。部活動にまい進する事になった⤴。医療系の大学だからか生物オタクが多い。文科系の部活で一番規模の大きい部に同じ学科の友達に誘われて入った。野生のシカやムササビや野鳥を観察に行ったり、蛍を育てたり山にキャンプに行ったり、大学は海に割と近かくてよく行った。青森の秘境にも行った。

 

ある日友達が、同じ学年の2浪して入った男の子のことが好きだと私に言ってきた。その時、嫌な予感がしていた。彼は多分私に好意を持っているから良く話しかけてくる事を察して≪先に好きになったのは私だからね。≫とけん制してきたのだ。「え~!うっそ~!そうなの~!」と驚いたふりをした。アウトドア派で髪の毛サラサラ、少し日に焼けた整った顔立ちの彼は誰から見ても格好良かった。口下手だけど優しい2歳上の彼。その彼が私の持っていたハンドタオルをふざけて取り上げてきて、取り返そうとしたら返してくれずに綱引きみたいになったことがあった。傍から見たらいイチャついているように見えたのだろう。友達の怖い顔がチラッと見えた。

 

もう一人、気になる人がいた。他学科の大江千里みたいなメガネをかけた1年先輩。声が魅力的だった。やんちゃで母性本能をくすぐるような声。ある晩みんなで蛍を見に行った。その道中、山道を歩いたのだが、暗くて足元が全く見えなくて困っていたら、先輩が手を引いてくれた。蛍の光を見ながら心臓がバクバクしていた。真っ暗でよかったあと思った。先輩はひょろっとした背の高い都会っ子で、都内の中高に通っていた私と行動範囲が似ていた。だから新宿の地下道や池袋などどこに行っても怖くなかったし、説明が要らなかった。くだらない話も面白かった。

 

その二人に同時に告白されたのだ。若いっていい!!どっちも好きだったから、どうするべきか迷った。どっちもって訳にはいかないし。2浪の彼は格好良くって口下手な九州男児、1年先輩の彼は都会的でクラスの人気者って感じ。

 

ただ友達の怖い顔が浮かんできた。でもそれより怖かったのはタオルを引っ張る九州男児の力の強さだった。体ごと引きずられるくらいの強さに、本能的に怖いと思った。以前の記事にも書いたが暴力をふるう父のもとで育った私は男の人の暴力が怖い。友達の顔が怖い件、腕力が強すぎる件、2つの理由から1年先輩の大江千里風彼と付き合うことにした。

 

その彼とははっきり別れるまで3年くらい付き合っていた。彼が大学で一番大きな部の部長だったからか?、何か知らないけど私たちは有名人だった。よく知らない後輩から手紙をもらい、「先輩たちの様になりたいです!」「絶対別れないで下さい!」的な意味不明なファンレターを何通も貰った。彼は秘密裏で一体何をしていたのだろう?

 

綺麗な青春のお付き合いの頃は本当に楽しかった。ふたりで色んな所に行ったし自転車の後ろに何度も乗せてもらった。永遠に話が途切れなかった。逢えない時間の苦しさも思い出す。今でも淡い思い出が宝物だし。大切にしてくれた彼には幸せになっていて欲しいと思っている。

 

九州男子の彼のこともずっと想っていた。彼に彼女が出来たとき良かったなと思う反面、彼女の首元に光る彼からのプレゼントであろうネックレスが眩しかった。でも卒業するまでの4年間も、その後もいつも優しい眼差しが変わらず本当に大切な友達の一人だった。彼は今どうしているだろう。きっと良き父になっている事だろう。

 

でも人間はずっと子供のままでは入られない。大人の世界に一歩足を踏み入れると後戻りが出来ない。もしあの時試験中寝なかったら、もし浪人してもう一年頑張ったら、もしずっと付き合っていたら、もしもう一人の彼を選んでいたら、もしも友達より先に好きだって言っていたら、全く違う人生になっていたような気がする。パラレルワールドは引き返せない。

 

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